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2025/12/12

ハイヤー運転手の「労働時間」はどう決まる? 2024年改正「36協定」の影響と残業代のリアル

「ハイヤー運転手はVIP待ちで楽そう」「いや、お客様都合で際限なく残業がありそう」など、ハイヤー運転手の労働時間には、両極端なイメージを持たれているかもしれません。

特に2024年4月からは、運送業界の「36協定(残業規制)」が厳しくなり、働き方が大きく変わりました。

「結局、労働時間はどう管理されているのか?」「残業代は減らないか?」といった不安を抱える転職希望者は多いでしょう。

この記事では、ハイヤー運転手の労働時間を決める2つの法律(改善基準告示と36協定)の関係性と、2024年改正によるリアルな影響を分かりやすく解説します。

ハイヤー運転手の労働時間には「手待ち時間」も含まれる

ハイヤー運転手の労働時間は、原則として一般の会社員と同じく「1日8時間・週40時間」(労働基準法)と定められています。しかし、ハイヤー特有の業務形態から、労働時間のカウント方法には大きな特徴があります。

最大の特徴は「手待ち時間」の扱い

ハイヤー運転手の労働時間における最大の特徴は、「手待ち時間(待機時間)」の扱いです。お客様を待っている時間であっても、会社の指揮命令下から解放されていない(すぐに業務に戻れる状態にある)ため、「休憩」ではなく「労働時間」としてカウントされます。

この手待ち時間が労働時間となる法的な根拠は、最高裁判所の判例に基づき、「労働からの解放」がされていない時間はすべて労働とみなされるという考え方にあります。

もしこれが休憩扱いになった場合、ハイヤー運転手は長時間拘束されながらも給与が発生しないという大きな不利益を被ることになります。しかし、現行の制度では手待ち時間に対して給与(残業代)が発生することが定められており、ドライバーの収入と健康が守られています。

休憩時間については、この「手待ち時間」とは別に、法律通り(8時間超で1時間など)しっかりと確保する必要があるのです。

ハイヤー運転手の労働時間を決める「2つの法律」

ハイヤー運転手の労働時間管理は、他の業界よりも複雑であり、2つの異なる法律によって規制されています。転職を検討するにあたり、この2つのルールの関係性を理解しておくことが、優良企業を見極めるための知識にもなるのでチェックしておきましょう。

ルール①労働基準法(36協定)

労働基準法(36協定)とは、すべて働く人に適用される基本のルールです。残業(法定労働時間を超える労働時間)を従業員にさせる場合、会社と従業員代表が「36協定」を締結し、労使間で残業の限度時間を定める必要があります。

ルール②改善基準告示

改善基準告示とは、自動車運転者(タクシー・ハイヤー・トラック等)に特化したルールです。これは、長時間労働になりがちな運転者の健康を守るため、労働基準法を補完する形で存在します。特に、運転と休憩を含めた「拘束時間(労働時間+休憩時間)」の上限(例:1ヶ月288時間まで)などを厳しく定めています。

つまり、ハイヤー運転手の会社は、「改善基準告示」と「労働基準法(36協定)」の両方を守る義務があります。この二重の規制が、ドライバーの労働時間を厳重に管理する仕組みとなっています。

【2024年改正】「36協定」適用でハイヤー運転手の労働時間はどう変わった?

2024年4月は、運送業界全体で働き方が大きく変わるターニングポイントとなりました。この改正が、ハイヤー運転手の労働時間の管理に大きな影響を与えています。

2024年4月からの大きな変更点

2024年3月まで、ハイヤー運転手を含む自動車運転業務は、36協定の残業上限規制の適用が猶予されていました。この猶予が終了した背景には、過労死の防止や、すべての産業における公平な労働時間管理が求められた社会的要請があります。
2024年4月をもってこの猶予が終了し、ハイヤー運転手にも「36協定」が本格適用となり、残業規制が厳格化されました。

具体的な規制内容

今回の改正において、ハイヤー運転者の労働時間管理の前提が明確になりました。

もともと、ハイヤー運転者には、タクシー運転者に適用されるような厳格な拘束時間や休息期間等の規定は適用されていませんでしたが、これは2024年4月以降も変わらず、適用されない形式が継続されています。

ただし、今回の時間外労働の上限規制の適用が定められたことにより、改善基準告示において、以下の点に留意することが会社側に求められるようになりました。

① 36協定の遵守事項の追加
労使当事者は、36協定の締結にあたり、以下の事項を遵守することが義務付けられました。

• 時間外労働時間は、原則として限度時間(1ヵ月45時間、1年360時間)を超えない時間に限ること。
• 臨時的な特別の事情により限度時間を超えて労働させる場合でも、時間外労働時間は1年960時間を超えない範囲内とすること。

• 36協定において、時間外労働時間数・休日労働時間数を、それぞれできる限り短くするよう努めること。

②休息期間の配慮義務
ハイヤー運転者が疲労回復を図るために、必要な睡眠時間を確保できるよう、勤務終了後に一定の休息期間を与えることへの配慮も義務付けられています。

この法改正により、ハイヤー会社側は、もともと規制が緩かった時間外労働に対し、厳格な上限管理(年960時間)を徹底する必要が生じました。

これにより、サービス残業や過度な長時間労働が(制度上)できなくなったと考えられます。同時に、労働時間管理システムの導入や乗務シフトの見直しなども進められており、ドライバーが健康に働ける環境が整ってきています。

残業規制で給料(残業代)は減る?

「残業ができなくなって、給料が減るのでは?」という懸念は、転職希望者が抱える現実的な不安です。ハイヤー運転手の労働時間が規制されることで、給与体系にどのような影響があるのかを見ていきましょう。

<影響1:サービス残業の撲滅>
会社は36協定の上限(年960時間)を超えると、厳しく罰せられることになります。このため、労働時間管理を徹底せざるを得ず、結果としてサービス残業が起こりにくい環境が整備されました。つまり、働いた分だけ、しっかりと残業代を受け取れる環境が法的に保障されています。

<影響2:給与体系の見直し>
残業代で稼ぐビジネスモデルが限界を迎えたため、優良企業では、給与体系の見直しが進んでいます。

• 基本給の相場観を上げたり、「語学手当」「接客スキル手当」といった付加価値に対する手当を導入したりする動きが見られます。これにより、労働時間の長さではなく、サービスの質で評価する方向へシフトしているのが現状です。

• 残業代が減っても生活水準が維持できる具体的な仕組みとして、多くの会社が基本給+手当の割合を増やし、安定性を重視する形に給与構造を変えています。これは、タクシー運転手のように歩合給に依存するビジネスモデルとの大きな違いです。

<影響3:効率的な働き方の推進>
無駄な待機時間を減らす、デジタル(配車システム)を活用するなど、会社全体で生産性向上が求められます。

結論として、ダラダラ残業は減る傾向にあるでしょうが、スキル次第で安定した給与を得る方向へシフトしています。質の高いサービスを提供することで、労働時間の短縮と安定した収入を両立することが可能になると考えられます。

ハイヤー運転手への転職、鍵は「労務管理(コンプライアンス)」の徹底さ

2024年の法改正を受け、法律を守れる会社とそうでない会社の差が明確になりました。そのため、転職成功の鍵は、コンプライアンス意識の高いハイヤー会社を選ぶことにあります。

• 優良な会社は、求人票に「2024年改正対応済み」「労務管理徹底」を明記し、ドライバーの健康を守る姿勢をアピールしています。

• デジタルタコグラフ(デジタコ)や勤怠管理システムを導入している会社は、労働時間管理が徹底されている証拠になるでしょう。

面接で労働時間や残業代の計算方法について明確に回答があるかを確認することが重要です。

法律(36協定や改善基準告示)を守るということは、ドライバーの健康を守る意識が高い会社を選ぶことに直結します。安心して働くために、労務管理が徹底された優良企業かを精査し、選びましょう。

ハイヤー運転手への転職は、ドライバーに特化した求人サービスの利用がおすすめです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
・『タクシー運転手への転職はどこに相談する?おすすめのサービスと活用法を紹介!

ハイヤー運転手の労働時間は「手待ち時間」と「残業規制」で変わる

ハイヤー運転手の労働時間は、「手待ち時間」も含まれるのが特徴です。法律は「労働基準法(36協定)」と業界特有の「改善基準告示」の両方で厳しく管理されています。

2024年4月からは「36協定」の残業上限(年960時間)が適用され、会社側の労務管理はより厳格化されました。これにより、サービス残業が撲滅され、ドライバーが健康的に働ける環境が(制度上)整いつつあると言えるでしょう。

また、転職を成功させるには、「法律を遵守し、ドライバーの労働時間をしっかり守る」という意識の高い会社を選ぶことが、これまで以上に重要になりました。この点をご留意いただき、ハイヤー運転手への転職にチャレンジしてください。

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この記事の執筆者

ドライバー転職ナビ編集部
ドライバー/運転手の転職サイト「ドライバー転職ナビ」の編集部です。トラックやタクシーなどのドライバーの転職に役立つ情報をわかりやすくまとめてお届けします。